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2012年3月18日 (日)

「起業のファイナンス」著者、磯崎哲也さん
グロービスへご登場!!
「日本のベンチャーは始まったばかり」

Photo_3前職時代の尊敬すべきのOBでもある、磯崎哲也さん (公認会計士)が、3月16日(金)グロービス経営大学院の公認クラブGEC(グロービス・アントレプレナーズ・クラブ)のイベントに登場されました。

前半は、起業家のバイブルといわれる「起業のファイナンス」に関するお話、後半は参加者からの起業やベンチャー視点のファイナンスに関する質疑応答という構成でアッという間の2時間強でした。

カネ系鋭意学習中の私にとっては非常に分かり易く、また現場視点、かつGoogle、Facebook、ソフトバンク、楽天、DeNA、GREEなどの超メジャー会社の事例も豊富でまさに「実学の時間」を体験することができました。

参加したくても出来なかった方も多数いらしたようなので、私の以下のメモが少しでもお役に立てれば幸いです。

●大結論:「日本のベンチャーは始まったばかり」

GDPがマイナス成長になったり、円高が進んだりと日本経済がこんなんだから「ベンチャーはもうだめなのではないか」という昨今の風潮が、かなり誤ったネガティブな認識だということがよ~くわかりました。

現在、新しい雇用を生んでいるのは若い会社であることが多いこと(そういえば、最近のGREEやDeNAのエンジニアの奪い合いや大量採用、Amazonの仙台コールセンター・岐阜の物流センター新設で各1,000名の新規雇用など思い出しました)。

また、日本は沈没しているという風潮について。2001年9月から2011年9月までの10年間でTOPIXは26%下落しているが、57%の上場企業の株価は上がっている。大きく下げているのが重厚長大の企業のため、加重平均的に全体値への影響が大きく出てしまっているのだと事実。このように、ディテールで企業の実態を見ていかないと目が曇ってしまうと強く認識しました。

VC(ベンチャーキャピタル)の投資が下がっているのではないかという指摘について。実際に、最近の金額が落ちているのは事実だが、賑わっているところは賑わっていて気にするレベル感ではないということ。

「アタマのいい人の間違い」印象に残るフレーズですが、日本は高齢化で経済成長もしない、だから起業には向かない、日本は税率が高い、産業は成長していない、だからベンチャーも成長できない。と、これらは全て「アタマのいい人たちの間違い」であって、ベンチャーとマクロは関係無いそうです。

本質を言えば、本当にいいベンチャーなら景気が悪かろうが、倒産する会社が増えようが実際関係が無い(相関が無いといことでしょう)ということです。

●日本のベンチャーファイナンスは米国の10年~15年遅れ

単純に、日本ベンチャーやファイナンスリテラシーが追い着いていないともいえる。株式の種類の違いを理解していない、IPOなど将来のことを考慮しない資本政策等などが随分と見受けられるようです。

現在はソフトバンク、楽天など大手のベンチャーが先導してM&Aを実施し、事例を増やしてベンチャー生態系を作っているところといえます。ベンチャーが増えれば、もっとM&Aも増えていくでしょう。

公開前の資金調達も、米国は日本の100倍から1,000倍。しかしながら、仮に楽天の公開前の資金調達4.5億円が440億円だったと仮定しても当時その金額感の必要性が見いだせないことも事実で、現状の日本企業の資金調達額は妥当、必要にして十分ともいえそうです。

●日本での上場時に気を付けること

持ち株比率の実質的な制限があります。ある証券会社がいうには、VC(ベンチャーキャピタル)+SO(ストックオプション)で30%以内にとどめることだそうです。

共同創業者との持ち株比率の調整も重要です。IPO後の退社の際の持ち株を渡すのか返してもらうのかは事前に契約書内で決めておくのが望ましいです。

例えば、1年で辞めたら100%返してもらい、2年なら75%などパターンはいくつかあります(reverce vesting)。それから株価は時価ではなく付与時の価格にしておきます。(企業価値が上がり、買い戻せない株価になってしまう可能性もあるからです。本来は喜ぶべきことですが)

ただ、人間関係の問題もあるのでガチガチにせず、交渉のたたき台的な位置づけにしておくことをお薦めします。

●「デュアルクラス」

最近ではGoogleなどで有名な種類株式(元々は、ニューヨークタイムズ社、ワシントンポスト社などメディア企業が主流)。

1株あたりの経済価値は等しいですが、議決権が1対10などと異なりクラスが複数存在する株式です。

上場する意味があるのか?などの議論もありますが、コカコーラなど食品・飲料など事業内容がわかりやすい場合は議決権が等しい方が、市場原理がはたらき最適解に行き着くこともあり得ますが、GoogleやFacebookなど先進的テクノロジー系の新規事業の内容は株主が理解することが難しい場合もあります。

よって、先進的、専門的な内容の事業会社の場合議決権が創業者などに偏りがあったとしても、問題があるとは言えず、むしろその方が企業価値が高まるケースも十分にあります

●「Femto Startup」について

磯崎さんたちが今年設立されたベンチャー支援組織です。
投資額は、1件あたり200万円~300万円で、年間3件~5件ぐらいを想定されているようです。
対象は、強い成長志向で、超アーリーステージの企業が対象です。
投資額が一見低そうですが、バイアウトやIPOを想定したときの資本政策上、外部に持たせる資本(株式)が高くならないようにという配慮もあるとのこと。(なるほど!)

ベンチャーとしてのIPOの進め方や資本政策の在り方を磯崎さんに教えてもらえるのは本当にラッキーだと思いました。

長くなりました。ざっくりと以上です。