ジョブスのiPodを
MBAのクラスで扱うとこうなる
先日の大学院のクラスで、『iPod(2001年発売)』がなぜマネタイズに成功し、さらに収益を拡大させることができたのかをいくつかのフレームワークで切って分析し、議論したのですが非常に面白かったです。
詳細なフレームワークはここでの掲載は割愛させて頂きますが(グロービスへ行こう!?)、単純にiPodの成功を追うというよりも、新テクノロジーが社会と企業と人々にもたらすパラダイムシフトをどう捉えて、永続的に価値あるビジネスを生み出せるかを議論しました。
下記は私の見解です。
●ナップスターのもたらした社会への影響
全てのデジタル化されたコンテンツはそれが仮に違法であったとしても、インターネット環境とPCがあればそのコンテンツの本来の所有者や著作権者と何ら金銭的繋がりを持つこと無く、個人ユーザーと個人ユーザーとの間で直接取引が出来る事実を世の中全体が認識したこと。
そして、その後のデジタルコンテンツ流通ビジネスを考えるうえでの起点となった。
●iPod(Apple)がもたらしたビジネス界への影響と、収益化の理由
『高いハード(iPod 399ドル)と安価なソフト(1曲 0.99ドル)』という、かつて多くの企業が成功してきた『安いハード(時に無料のハード)+運用課金チャリンチャリン』を、完全に根本的に変えた発想。
当時のソニーコンピュータエンタテインメントがゲーム端末のPS2/3でほとんど儲けておらず、大量のゲームソフトの権利で儲けていたことも有名な話しですが、ソニーがApple型の発想にいけなかった理由であり、まさしく、成功体験が足かせとなったのかと思われます。
またグループ内で音楽コンテンツを抱えているということも、グループ会社内で利益相反をかかえてしまうため、いきなり1曲100円にすることも組織的に厳しかったのかもしれません。
そんな中、ずっと家に置いてあった「スティーブ・ジョブス ~偶像復活~ビジネス史上最も偉大な第2幕」(原題 icon Steve Jobs)を、まだ読んでいなかったので今さらあらためてざっと読みました。
有名な本なので、多数ご存じと思いますが、90年後半にジョブスがアップル社に戻ってから2004年ごろまでを書いた本です。
第11章が「iPod、iTunes、故に我あり」と、ちょうこのクラスで扱ったところです。
冒頭シーンで、音楽コンテンツダウンロード市場に無限の可能性があるのに、MP3プレイヤーがさっぱり売れていない実態を、ジョブスが「既存のMP3プレイヤーを見ると、家電メーカーがソフト面を理解していないことがよくわかる」とバッサリ切って、自分ならできるという自信を見せています。
そして、ナップスターなどの登場による音楽業界からのインターネットテクノロジーへの不信から、iPod開発の裏話、高いハード価格設定、情熱的なジョブスの音楽レーベルへの提案と説得などはなかなか興味が尽きませんでした。
RIAAのローゼン会長も下記のように述べていますが、音楽という商品を『全く新しい方法でどうやって売るかをとことん考えた』のが、ジョブスだったのかと思います
「テクノロジーの人々にとって音楽はソフトウェアに過ぎません。でも、スティーブは熱狂的な音楽ファンでした。これは音楽業界の人々にとって大きな意味がありました」
ジョブスだから、と言ってしまえばそれまでで思考停止を招きます。ジョブスが何をしたのか、なぜそうしたのかを追跡し分析するところにこの議論のカギがありました。