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2012年1月24日 (火)

これは、もはや白熱教室!?
リーダーに求められる有事の"しびれる意思決定"(3/3)

_3 冨山氏からの次なる問いは、6週間後の原発による放射能の影響による、「屋内退避要請」が政府から出ている中、地域の経済活動を正常化させるための「バスの運行再開要請」を引き受けるか受けないかです。

長くなるので、この問いの詳細は省きますが、この2時間強の「白熱教室」は、冨山氏の問いに対して、自分がバス会社の社長だったらどう意思決定するかをリアリティをもって徹底的に考え抜く非常に濃密な時間でした。

ちなみに、以下は、冨山氏が共に経営する仲間、社員に対していつも繰り返し問いている8つの質問ということで、共有して頂きました。

この問いが、単なる飾り物の企業理念ではなく、この1年の間、現地で実際の非常時に機能していたそうです。

経営共創基盤:8つの質問

・心は自由であるか
・逃げていないか
・当事者、最高責任者の頭とこころで考え、行動しているか
・現実の成果に固執しているか
・本質的な使命は何か、使命に忠実か
・家族、友人、社会に対して誇れるか
・仲間、顧客、ステークホルダーに対してフェアか
・多様性と異質性に対して寛容か

自分ごととしてイメージしやすい平易な言葉ながらも、非常に深い重みをもった心に残る問いかけです。

冨山さん、ありがとうございました!
コーディネイト頂いた岡島先生、どうもありがとうございました!!

※写真は、学長の堀さんとのセッション時のものです。

これは、もはや白熱教室!?
リーダーに求められる有事の"しびれる意思決定"(2/3)

_2_2 「それでは、引き受ける場合、運転手はどうやって選びますか?」間髪入れずに、この問いがきました。

・通常業務とする。断る権利を認める。万が一の場合の補償の仕組みを作り、コミットする。
・上位レイヤー(偉い人)の人から運転に出す
・希望ベース(ヤル気、モチベーション、、)
・運転のうまい人から選ぶ(スキルベース)

いろいろな答えが出ます。「希望」をとる、というやり方は、一種の踏み絵ではありませんか?というまたも突っ込み。
(個人的には、非常時において希望ベースは「踏み絵」になると思っています)

また、平等なやり方を選ぶ、という意見に対して、「平等」とは何か?「公平」とは何か?というさらなる突っ込み。
サイコロを振って、数学的確率論でいけば平等なのか?通常の業務シフトを適用して、順番に実行すれば平等なのか?年齢順?スキルが高い順?

フェアネスはどこに??

正解はありません。緊急時(有事)の意思決定は、「価値の判断」です。
どれが正しい、正しくないということではない。
どの選択肢を選んだとしても、死にもの狂いの抵抗にあう可能性もあります。

ちなみに会場の答えは、以下の三択に絞った問いに対して見事に3分の1ずつキレイに分かれました。どうやら、私たちグロービスの学生は健全な集団のようです。(ちなみに、役所系だと「本人の希望」支持が最大多数になるそうです)

・シフトベース(通常シフトの適用、順番、などのやり方)
・本人の希望
・プロファイルして指名(スキル、適性などから選抜する)

実際に冨山氏は、引き受けました。また、運転手選びは、シフトベースだったそうです。

また、そういう中で、非番の人がテレビでその状況を知り(携帯がなかなか繋がらない状況)、自分たちが何かできることはないかと駆けつけた社員たちも居たそうです。奥さんが妊婦の社員の方は、自分に被爆の可能性があるかもしれないため、除染が済み安全が確認されるまで帰らない判断をするなど、いろいろな人間ドラマもあったそうです。

そして、12日の午後からバスは走りました。

冨山氏からの次なる問いは、6週間後の原発による放射能の影響による、「屋内退避要請」が政府から出ている中、地域の経済活動を正常化させるための「バスの運行再開要請」を引き受けるか受けないかです。(3/3へ続く)

※写真は、冨山氏。

これは、もはや白熱教室!?
リーダーに求められる有事の"しびれる意思決定"(1/3)

_1 「リーダーに求められる、有事の"しびれる意思決定"」というしびれるタイトルのセミナーに昨日参加しました。
これは、もはやセミナーという生ぬるいものではなく、マイケル・サンデル教授のハーバード白熱教室を彷彿とさせるものでした。
(正確には、2012年1月23日開催された、グロービス経営大学院の本科生・卒業生限定:特別セミナー)

講師である、経営コンサルティング会社「経営共創基盤」の代表の冨山氏は、岩手、福島のバス会社の事業再構築に関わっておられます。
奇しくも昨年3月11日の東日本大震災で、被災しつつも地元経済の復興にも協力する立場となってしまった企業のリーダーとして、昨年は活動されていたわけです。

昨日の「白熱教室」は、冨山氏のこの約1年の生々しくも貴重な体験を元に行われました。

「いま、3月11日(震災の起こった日)です。東北で地震が起こりました。あなたは、リーダーで東京にいます、地元のバス会社に対してどんな指示を出しますか」
この質問から始まりました。

次々と受講生が手を挙げて答え、その答えに対して冨山氏の鋭い突っ込みの応酬が繰り返され、最後に、実際に冨山氏がどうしたのか、種明かしをするという流れで、このあと質問はどんどんシリアスにヘビーになっていきました。

次の質問です。
「いまは、3月11日の夜9時30分。原発の状況が危機的となり早急に近隣住民を避難させなくてはならず、政府からバスを出して住民避難輸送の協力をして欲しいという要請がきました。依然として、原発は予断を許さない危機的な状況です。いま、メルトダウンするかもしれません。あなたがリーダーならその要請に応じますか?

参加者の意見は、真っ二つに分かれました。

「引き受ける」「引き受けない」、理由はそれぞれにあります。

公共的責任、人として、引き受ける。引き受けなかったら一生後悔する。それは、単なる格好つけ、自己満足、エゴでは?運転する社員の命の保証はどうする?という突っ込み。
安全の保証が無いから引き受けない。それで、地元の企業として、今後やっていけるのか?地元にはたくさんの知り合いもいるでしょう?

「それでは、引き受ける場合、運転手はどうやって選びますか?」間髪入れずに、この問いがきました。(2/3へ続く)

2012年1月17日 (火)

人は利己的か
「利己的でない遺伝子」への進化

Jbr2_2 先日届いたハーバードビジネスレビュー2月号の論文に「利己的でない遺伝子」というテーマがあり、最近のクラスでたまたま起こった議論、「なぜ自分がかわいいのか」に通じるものがあるかと期待して読んでみました。

「かわいい」とはややニュアンスが異なるかもしれませんが論調がなかなか興味深かったので、ちょっとまとめてみました。

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元々は、人は利己的であるということが前提の社会でした。生物進化学者リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」内の記述はあまりに有名です。

しかし、2006年にこの流れが変わり始めました。ハーバード大の数理生物学者マーティン・ノヴァクが「サイエンス」誌で「協力の進化」について述べたからです。
具体的には人類の最も『注目すべき進化』は、競争社会で協力を生み出す能力の誕生であると。
近年のオープンソース・ソフトウェアの台頭、ネット上での知識や情報の共有の文化など協力が科学的に実施されやすくなってきていることも要因のひ とつと言われています。

印象深かったのは、ジョージメイソン大の神経経済学研究センターのケビン・マッケイブ教授らの共同研究から人を信頼したり信用しているとき、人は報われた気持ちになることが示されたという話。(この論文には、実にいろんなケースが登場します)

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とはいえ、人は利己的であるということはいまだ多く信じられていることも事実
で、その要因として4つ、「部分的な真実」「歴史」「単純さ」「習慣」とあ
げられています。4つめの「習慣」に書かれてあった、長い間「人は利己的である」という社会の認識が定着し、先入観となっていた背景納得するところが多々あります。

現在、科学的に協力することが推進されるなかで、人間の遺伝子は「利己的でない遺伝子」に進化していくのでしょうか

2012年1月 3日 (火)

キャズム理論のムーア最新本
「エスケープベロシティ」2/2

Photo そして、この本のメインテーマです。キャズムを埋めるには、以下の5つのフレームワークがあると言っています。

1.カテゴリー力
2.企業力
3.市場力
4.製品力
5.実行力

紹介しておきながらですが、要所要所では「おー、なるほど!」というところがあるのですが、ある意味既知の事実と法則の組み合わせのようでもあります。ただし、私、このテの本、結構読んでいるのでそのせいかもしれませんが。。

実際、ポーターの競争戦略(なかでも、差別化戦略)の要素は、高い頻度で登場し重要な論点を担っています。

ドラッカーのリーダーシップとマネジメントの話も同様に登場するので、再確認、再認識するには重宝しそうです。確かに、二人の大賢者の融合の集大成とも言えそうです。

ちょっと落とした言い方をしてしまいましたが、具体的事例(IBM、シスコ、アカマイ、コンパック、HP、セールスフォース、アドビ、オラクル、デル、Yahoo等)が非常に豊富なのでフレームワークや法則について知識ベースで自信がある人は事例やコラムなどを拾い読みして、見識を深堀し応用力を付けるにはいいかもしれません。

この事例の豊富さは、さすが実際に数多くのハイテク企業をクライアントにコンサルタントをしているムーアならはかと思います。

まだ読み終えていませんが、途中レポでした。

キャズム理論のムーア最新本
「エスケープベロシティ」1/2

Jobsgates_2キャズム理論のムーアの最新本の「エスケープベロシティ」を今読んでるところです。
アドビのCEOが、マイケル・ポーターとドラッカーの融合の集大成と称したと聞き、超期待して取っ掛かりました。

先に、「おー、なるほど!」と思った箇所を抜粋します。二人の超有名な経営者、スティーブ・ジョブスビル・ゲイツリーダーシップの差異について述べています。これはなかなか秀逸です。

----以下、抜粋

スティーブ・ジョブスリーダーシップ能力を極めて高く評価されていたがこれは当然と言えよう。(なお、天は二物を与えずで、彼はマネジメントという点ではあまり芳しい評価を受けていない)
興味深いことに、ビル・ゲイツはリーダーシップの視点でジョブスほどの高い評価を得ていないことが多いが、ゲイツも同様の評価を受けるべきだ。
想像力に基づいたリーダーシップを発揮するジョブスとは異なり、ゲイツは事実に基づいたリーダーシップを発揮する。特に、打ち負かしたい参照企業(競合企業の意味と想定)の深い理解に基づくリーダーシップは彼の得意とするところだ。これは、マイクロソフト社がロータス、ワードパーフェクト、アルダス、アシュトンテイト、ノベル、アップル、ネットスケープなどのトップ企業に対してしてきたことをみればわかる。

----抜粋、ここまで

ジョブスとゲイツは経営者としてよく並列比較され語られることが多いですが、私が最も腹落ちした"くだり"です。同じリーダーシップでも、起点がクリエイティビティ事実の洞察という点は確かに異なりますね。

そして、この本のメインテーマ、キャズムを埋めるには、以下の5つのフレームワークがあると言っています。

⇒ 2/2へ続く

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