あらためて「キャズム超え」
「ハイテク」をブレークさせる『超』マーケティング理論、という衝撃的デビューを飾ったジェフリー・ムーアの「キャズム」。
いま、約10年ぶりに、この「キャズム」を読んでいます。具体的な企業事例には若干の旧さはあるものの、その土台にある理論は全く遜色ありません。
むしろ現代のマーケッター、中でも特にテクノロジー系のマーケティングに関わる方は皆さん一読されることを強く薦めたいと思います。
米国ハイテクマーケティング業界では、今でもマーケッターのバイブルと言われているそうです。
「キャズム」を語るには、先にロジャースのイノベーター理論に触れる必要があります。
イノベーター理論とは、スタンフォード大のロジャース教授が提唱した、ハイテクイノベーションの普及に関する理論で、消費者の商品購入や導入に対する態度を早い順から、以下の5つのタイプに分類したものです。
1.イノベーター 2.5%
2アーリーアダプター 13.5%
---------------(ここがキャズム 16%)
3.アーリー・マジョリティ 34%
4.レイト・マジョリティ 34%
5.ラガード 16%
しかし、この理論の、早い時期の導入者のイノベーターから遅い時期のラガードに移行していく時間の経過が正比例的に移行することなど全くあり得ないこと。
むしろ、イノベーターからアーリーアダプターに移行したあと、ちょうど市場の16%を占有した時点からアーリーマジョリティに移行することが非常に困難を伴うことに着眼し、それを「キャズム(溝)」と表現、ハイテク業界マーケッターに警鐘を鳴らしたのが、同書の著者のジェフリー・ムーアでした。
前段と重複しますが、10年を経て再び読んでみて、具体的な企業事例の旧さなどはあるにせよ、その土台にあるベンダーと導入する企業ユーザー側(特に、大企業特有の旧い常識・見識が土台にある日本の大手上場各社などにあてはめるとbetter)との受発注の経過と関係性を描いた「くだり」などは現代でも十分に通用します。
オラクルがなぜあんなにも強かったのか、そして今現に強い理由がよくわかります。
ハイテク企業がブレークスルーするためは「キャズム超え」が必要で、それにリソースを集中することの有用性に思わずゾクッとします。
これは、10年前の本なので今の若いテクノロジー系の人はまだ読んだことが無いかもしれないですが、それを思うと非常に勿体無いと思います。