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2011年10月30日 (日)

あらためて「キャズム超え」

Photo 「ハイテク」をブレークさせる『超』マーケティング理論、という衝撃的デビューを飾ったジェフリー・ムーアの「キャズム」

いま、約10年ぶりに、この「キャズム」を読んでいます。具体的な企業事例には若干の旧さはあるものの、その土台にある理論は全く遜色ありません

むしろ現代のマーケッター、中でも特にテクノロジー系のマーケティングに関わる方は皆さん一読されることを強く薦めたいと思います。
米国ハイテクマーケティング業界では、今でもマーケッターのバイブルと言われているそうです。

「キャズム」を語るには、先にロジャースのイノベーター理論に触れる必要があります。
イノベーター理論とは、スタンフォード大のロジャース教授が提唱した、ハイテクイノベーションの普及に関する理論で、消費者の商品購入や導入に対する態度を早い順から、以下の5つのタイプに分類したものです。

1.イノベーター 2.5%
2アーリーアダプター 13.5%
---------------(ここがキャズム 16%)
3.アーリー・マジョリティ 34%
4.レイト・マジョリティ 34%
5.ラガード 16%

しかし、この理論の、早い時期の導入者のイノベーターから遅い時期のラガードに移行していく時間の経過が正比例的に移行することなど全くあり得ないこと
むしろ、イノベーターからアーリーアダプターに移行したあと、ちょうど市場の16%を占有した時点からアーリーマジョリティに移行することが非常に困難を伴うことに着眼し、それを「キャズム(溝)」と表現、ハイテク業界マーケッターに警鐘を鳴らしたのが、同書の著者のジェフリー・ムーアでした。

Photo まだ読了していませんが、あらためて強く認識したこと。

前段と重複しますが、10年を経て再び読んでみて、具体的な企業事例の旧さなどはあるにせよ、その土台にあるベンダーと導入する企業ユーザー側(特に、大企業特有の旧い常識・見識が土台にある日本の大手上場各社などにあてはめるとbetter)との受発注の経過と関係性を描いた「くだり」などは現代でも十分に通用します。

オラクルがなぜあんなにも強かったのか、そして今現に強い理由がよくわかります。

ハイテク企業がブレークスルーするためは「キャズム超え」が必要で、それにリソースを集中することの有用性に思わずゾクッとします。

これは、10年前の本なので今の若いテクノロジー系の人はまだ読んだことが無いかもしれないですが、それを思うと非常に勿体無いと思います。

2011年10月21日 (金)

マイケル・ポーターの「競争の戦略」
朝活読書会がスタート

Photo戦略論のバイブルといわれる、「競争の戦略」。著者は、5F(ファイブフォース)分析、バリューチェーンなど競争戦略手法の提唱で非常に高名な経営学者のマイケル・ポーターです。(ちなみに、1982年35歳という史上最年少の若さでハーバード大の教授となりました)

著者本人は冒頭の「日本語版に寄せて」で、以下のように述べています。

「この本は中身が濃いために、述べられている原理をマスターするには綿密な思考と勉強が必要です。決して一晩で飲み込むことなど出来ません。一つの業界、及び競合を理解するに要する情報はたいへんな量になるだけではなく、それら情報の分析には、判断と創造的思考が必要です

覚悟してこの本を読んでください、という警告ですね。(笑)

実際、ポーターの業界構造分析フレームワーク「5F」には、学校の授業で使わない日は無いぐらいお世話になってきましたが、この分厚い著書の読破には至っていませんでした。
やっと5分の1強読んだところですが、読むほどに競争戦略の奥深さに焦りつつも深い嘆息を繰り返しています。

今週から大学院の有志で今流行りの朝活でポーター読書会を始めました。1回約2時間で3章、1人が1章を担当し簡単なレジメを作って他の参加者に解説するスタイルです。
来週の月曜は第2回めの開催、第4章「マーケット・シグナル」(企業の意図、動機、目標、もしくは社内目標を直接、間接に示す行動)は私の担当です。短い章で、楽勝かと思いましたが結構奥が深く、考えさせられることが多い予想外に手強い章のようです。

つづきは、また次回に。

※写真は、まさしく「競争の戦略」。485ページ、5,600円、もろもろボリューミーです。

2011年10月17日 (月)

本邦初公開!
「Webマーケッター瞳」ができるまで

Photo_5 こんばんは。先ほど、「Webマーケッター瞳 シーズン2第8話」の原稿チェックを終えました。

このシリーズが始まったのがおととしの2009年8月末以来シーズン1と2の間に若干お休みありましたが、途中出版もあり、ファンの皆様には応援をずっと頂いておりました。

あらためまして、どうもありがとうございます!

そして、最近はよく「瞳は毎回どうやってかかれているんですか」とか」「打ち合わせは揉めるんですか」「何人でやってるんですか」等、さまざまな質問を都度頂いては、そのたびに応えさせて頂いておりました。

今さら気づいたのですが、「『Webマーケッター瞳』ができるまで」をこれまで一度も書いたことが無かったので、とても簡単ではありますが、以下に書かせて頂きます。

このコラムの出だしがヒント!です。本日10月17日に第8話の原稿チェックを終えた私は、編集の内藤さん(写真奥の人)と、漫画プロダクションのトレンドプロの市川さん(写真の人ではない)に先ほどコメント戻しをしたところです。

そして、この第8話は来月11月末にアップされます。この8話の打ち合わせは9月の上旬に打ち合わせなので、それから約3か月の間に以下のようなプロセスを経て、一般公開と進んでいきます。
意外と手間ヒマかかってるでしょう??

①ネタ打ち合わせ(写真は9話の打ち合わせ風景、10月11日、先週の水曜です。)
※最も重要なプロセスです。マーケティング、Web、ビジネス全般に関する「学び」のポイントを何にするか、ストーリー性をどう盛り込むかを、全11話のなかでのバランスを考えながら4人で議論します。
※時として、荒れますねw。先週は「平和」でした(^ ^)

↓↓↓
②ネームのチェック
※絵で書かれた「脚本」のようなものです。星井さん(写真の左の人)作成のネーム。ここで、打ち合わせ内容が反映されているか、また反映してみて違和感が無いかなどを、編集の内藤さんと村上でチェックをして、「戻し」を入れます。
※2往復から3往復します。

↓↓↓
Photo_6③下書きををチェック
※本日私がチェックしたのは、この「下書き」(写真)に相当する初校です。
※この段階はかなり最終チェックに近づいてきています。このタイミングのチェックは、構成やビジュアルの変更は基本なくなり、細かいセリフなどの「テキストデータ」がメインとなります。
※1往復ないし2往復します。

シーズン2は、「Webマーケティング」という新しいビジネスファンクションを旧い組織体制の日本の大手企業にどうやって組み込んでいくか。真面目に言うと、バリューチェーンにどう組み込むかを描きたいと思って取り組んでいます。

引き続き、応援どうぞよろしくお願いいたします。

※この下書き写真は、今日私がチェックしていた第8話の原稿の一部です。ネタバレになるので、ブナンなカットを選びましたw。

2011年10月13日 (木)

「小倉昌男 経営学」読了!
経営リーダー10の条件

4 あの「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親、名経営者といわれる小倉昌男氏の、「小倉昌男 経営学」本日読了しました。

期待以上のインプットができました。後半で特に私の記憶に焼き付いたのは、「スキー宅急便」「ゴルフ宅急便」「クール宅急便」「コレクトサービス」「ブックサービス」を、新商品事業として次々と開発していくそのプロセスそのものでした。

一流の経営者は、その会社で一番のマーケッターであること、が実体化しています。

・市場の動向を先読みし、

・自社に与える影響を予見し、

・いま自社として為すべきことを構想するとともに、

・実現方法を徹底して具体的に考える

姿勢には本当に恐れ入りました。

そして、実際に新規に商品化されたサービスは、ヒットし続けました。

「スキー宅急便」や「ゴルフ宅急便」が世の中に登場したとき私は中高生でしたが、うまい商品が出来たものがと子供ながらもその目の着眼点に感動したものです。

とにかく経営者としての小倉氏からは学ぶものがたくさんありましたが、最後の章の「経営リーダー10の条件」に触れることでこの本の最終的なまとめとしたいと思います。

小倉氏が経営者の資質として必須と考える要素が以下の10です。
この本を1冊まるごと読むことによって、この10の要素を具体的に同氏の具体的な言葉と生々しい経験によって理解することが出来ます。

  1. 論理的思考
  2. 時代の風を読む
  3. 戦略的思考
  4. 攻めの経営
  5. 行政に頼らぬ自立の精神
  6. 政治家に頼るな、自助努力あるのみ
  7. マスコミとのよい関係
  8. 明るい性格
  9. 身銭を切ること
  10. 高い倫理観

まさしく経営の名著でした。この本に出会えたことに感謝します。

※写真は、最後の第15章です。

2011年10月12日 (水)

「小倉昌男 経営学」(2-2)熱い!経営者魂
「クロネコヤマトの『宅急便』」の誕生と拡充

3いくつかの障壁があった「宅急便」ですが、営業開始後は順調に売り上げが伸びて、最初の5年間は倍々成長でした。

というのは素人目線で、小倉氏は、全国的に国民全てにサービスを届けるには現在のサービス網ではまだまだ不十分で(参考:営業から約5年後で面積カバー31%、人口カバー78%)、達成のためには運輸省といずれ戦う日が来ることを覚悟し、その対決に着々と備えていました。

最終的に全国サービスを実現させるまでに(面積カバー99.5%、人口カバー99.9%)、東北、九州など地域が分かれますが、運輸省に申請して認可が下りるまで5年から6年もかかっていました。果てしない期間ですね。

この長い5年~6年という長い年月について、氏は運輸省と運輸官僚の誠意の無さに対して心の底からの怒りと憤りをこの本の中で露わにされています。実に人間的で好感が持てると思いました。

以下、抜粋です。

「規制行政が既に時代遅れになっていることすら認識できない運輸省の役人の頭の悪さには呆れるばかりだったが、何より申請書類を5年も6年も放っておいて心が痛まないことのほうが許せなかった。与えられた仕事に最善を尽くすのが職業倫理ではないか。倫理観のひとかけらもない運輸省など無い方がいいのである。」

とはいえ、氏は確実に国とも正当にわたり合い、自社の成長とお客さまの満足を実現させていきました。ビジョナリーな経営者だとつくづく思います。

そして、さあ、いよいよクライマックスを向かえます。

※写真は、第8章です。私が特に好きな章です。

2011年10月10日 (月)

「小倉昌男 経営学」(2-1)熱い!経営者魂
「クロネコヤマトの『宅急便』」の誕生と拡充

2その後、順調に「小倉昌男 経営学」を読み進めています。
熱い執念の経営者魂で小倉氏が進める、「クロネコヤマトの『宅急便』」の誕生と拡充がなまなましく展開しています。

戦前(第2次世界大戦)の成功、その成功要因に固執し出遅れてしまった戦後の苦難を乗り越えて、自社オリジナル輸送サービス「クロネトヤマトの『宅急便』」がどのように誕生させたのか。

需要の見込、市場規模の割り出し、必要事業所・人員といった投資規模算出などの事前調査。言葉でまとめるとこの程度なのですが、詳細は実に緻密で実際的です。複数のパターンや可能性でいくつも調査を繰り返した膨大な事前プロセスがありました。

そして、役員全員の反対。全くの新しい市場に、前例の無いサービスを提供することに対してリスクが有り過ぎるというのです。その一方では、労働組合からの支持を受け着実に社員の理解を得ていきます。最終的には経営会議の決議を受けて商品化となりますが、この社内説得期間、理解の無い役員に悲観的な気持ちを持ちつつも社長権限で強引に進めるのではなく、根気強く誠意を持って理解を得るための行動をしていました。

次に商品設計。
今では当たり前の「宅急便」ですが、サービスというカタチの無いものをどう商品化(パッケージ化)させるのか。小倉氏はサービス設計にこだわりました。ちなみに、当時同様のカタチの無い商品として世に初登場したJALの「ジャルパック(ツアー旅行)」に、非常に影響を受けたようです。

そもそも、「個人の荷物の輸送サービス」であること。「翌日に届く」、「料金は地帯別均一料金」と、お客さまである家庭の主婦を意識してとにかく徹底的にわかりやすく単純化しました。そして、集荷の際に取次店に持っていけば100円安くなる、というオマケつきです。(これ、いつの間にか無くってますね(笑))

そして、昭和51年(1976年)1月23日営業開始です。その後の5年間の売り上げは、ほぼ倍々ゲームで増えていきました。

「拡充」については、2-2でご紹介します。繰り返しで申し訳ありませんが、これは本当に名著ですね。

※写真は「第5章 宅急便の開発」より

2011年10月 9日 (日)

ロングセラーでベストセラー
小倉昌男「経営学」を読んでいます

Photo_2「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親であり、大和運輸(現ヤマト運輸)の創業者の息子であり、元会長小倉昌男氏の「経営学」を読み始めました。

この本は、現在私がMBAを取得するために通っているグロービス経営大学院の「企業家リーダーシップ(*)」というクラスの4回目のクラスのメインリーディングに指定されている本です。

恥ずかしい話、私はこの本を全く知りませんでしたが、私がこの本を読み始めたことをFacebookに書くや否や10人近い友人、知り合いから「経営戦略、マーケティング、組織、人事と経営の全てが詰まっている」「新しいビジネスを始めるまでの話が詳細で具体的でとても勉強になる」「これは名著です」との声が矢継ぎ早に集まりました。

まだ全体の5分の1程度しか読んでいませんが、ちょうど今読んでいるところは、創業時から戦中(第2次世界大戦)までの勝ちパターンの強みが、戦後を向かえ外部環境の変化により全く効かなくなってしまったところです。逆に、過去の成功要因に固執してしまい、環境の変化に対応せず、まさしく「成功の復讐」を受けてしまったのです。

「同じ物流の会社なのに、日本通運、西濃運輸のような利益率がどうしても出せない。なぜなのか?」

競合他社の後塵を拝してしまい、なんとか再び自社の競争優位性を取り戻そうと経営者として必死にもがいているところです。
米国の先進の物流の仕組みを見るために港に行き、顧客や市場を見るというマーケティングの考え方を勉強するために業界の勉強会やセミナーに参加、他社の仕事ぶりを物陰から盗み見しに行くなど経営者自らがここまでするのか、というほど徹底的に考え抜き検証していました。

次の展開は「宅急便」というビジネスの夜明け前のようです。引き続き、この本を読み終えるまで感想コメントをアップし続けたいと思います。

(*)堀学長自ら教鞭を取る、唯一のクラス且つ必修クラス。3か月間で全6回のクラスでひとつの単位の取得。クラスは隔週で行われる。

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